 「人事と給与体系 ②手許に残るお金は？」 ------------------------------------------------------
最近、介護職の人の給与待遇面の悪さがニュースになっています。私
が訪問介護をやっているときにその実態が全国紙に掲載され、取材も
うけました。最近は全国のケア・マネージャーと介護福祉士が集会を
して「平均月収20万円でこの仕事はおかしい！」と声をあげたそうで
すが笑止です。昔、ハローワークで就職活動のイロハを教わったとき
から頭から離れない言葉は「要望の一つを切れば、選択肢はある。」
です。たとえばその集会に参加した人達は今の仕事に何を基準に対価
を提示できるのでしょうか？ 福祉が資本主義の中で生きていくには
他の業種と同じ厳しさが求められると思います。私が危惧しているの
は世間の波、相場も知らぬまま福祉の世界にどっぷり漬かっていく若
者が増えることです。実務３年の介護より会社員３年の方がその人
が世の中で生きていく上で大切なことだと思います。
介護保険法において、介護サービスについては介護報酬という対価が
支払われます。その介護サービスは主任がしようが、古参が新米がし
ようが額面はかわりありません。利用者が「○○さんにしてほしい。
」といってそのとおりヘルパー（介護スタッフ）をつけたところで指
名料なんて発生しません。
施設などで「手当」ってありますが介護報酬に手当ては付加されません。
私が働いてた訪問介護事業所ではオムツ交換を所長含め常勤は必ずやる
ことになってましたが「常勤ヘルパーがやりました」と請求したところ
で無意味です。ところで事務に専任してる人の給料大抵の場合どこから
でるのでしょう？
「手当」にしても「事務員の給与」にしても事業所に入った介護報酬の
総額から割り当てられてます。器具や文房具についても同様で、つまり
介護スタッフは介護報酬を満額受け取ることはまずありえません。です
が、事業所のやりくりを介護報酬以外の収入も含めてやっている場合は
必ずそうとはいえません。新聞広告のホームヘルパーの求人で身体介護
に他にみない高い時給を提示しているところがあります。この場合、身
体介護についてはそれに充当する介護報酬のほとんどを人件費にあてた
ものです。ちなみにそういう所の生活援助の時給は平均以下の場合があ
ります。
今度は施設でいうと、介護課の課長の役職手当、ケア記録用紙がなくな
ったからコピーしたそのコピー機のリース料金、そもそも今きているユ
ニフォームは降ってわいてきたお金で用意された手配されたのは明らか
です。もし、必要器具や設備の維持費に介護報酬をあてたら介護スタッ
フへの人件費は今の半分です。
ここまでのおさらいとして、介護にはそれに見合う介護報酬の全額がス
タッフの人件費になっていないこと。介護報酬には手当てもボーナスも
ないことをまずおぼえとくといいです。では、事業所、施設が運営に必
要な分をとって最後に残ったお金をスタッフの人件費にあてているかと
いわれたら、それはちがいます。その金額ではだれも求人応募にきませ
ん。大抵の人件費は、隣接する同業の時給を見ながら決めています。優
秀なスタッフがほしい場合は意図あって他より高い金額を提示してきます。
ところで、事業所はどうやって工面しているのでしょうか？。
一つは、介護保険にあてはまらないサービスを提供することです。有料老人
ホームで通常よりも多いスタッフ、豪華な設備、週の入浴の回数が１回多い
。これらは実費まるまる請求してきますし収入となります。 次に介護保険
法に基づかない収入があります。役所からの給付金、介護事業がとある会社
のメインの事業ではなく、慈善的なものとされている場合は会社の本業での
収入が介護事業に投入されてきます。各分野で大手の会社が介護事業を行う
とすると、たいてい天下りの所長だのマネージャーだの福祉に関して無資格
の人が派遣されてきます。彼らの給料が自分らのケアによって払われている
と思うと場合によっては腹が立ちますよね。よくヘルパーさん結託して、天
下りの所長を換えろと談判したり、無能な上司の下でやりたくないといって
ごっそりやめますが、完全な早とちりです。 あとＮＰＯ法人だと助成金だ
ってあります。 とにかく、介護報酬だけでやりくりしてる事業所はまずな
いわけで、給与も同業他社との比較で決められていることが多い実態を念頭
において下さい。
それでも現実は労働に相当しない低賃金。または賃金以上の労働。記録を書
くのはサービス残業。と就労条件は決してよくはありません。就労者の定着
率が２割というやる気があるのに現場に耐えられず辞めていく人、また体を
こわして志半ばで辞めていく人がたえません。他業種より労働環境に問題が
あるということです。
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