「知的障害者福祉 用語編」
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前回、知的障害は精神障害と違うこと。他の福祉と違って該当者の親族や関係 者によって制度やサービスが整備されてきたという特殊な歴史があることを記 述しました。今回は知的障害者福祉で頻度の多い言葉を幾つか採り上げて実態 にせまっていこうと思います。

先ずは「知恵おくれ」。差別用語であるこの言葉は知的障害者福祉を考えるの にとてもわかりやすいものです。なぜ「おくれ」なのか。それは学習能力があ るが健常者のスピードより遥かにゆっくりだという意味をもちます。鉄道の始 発から終点まで順序正しく駅名を繰り返す方、童話を丸覚えしていて繰り返し 言っていう方を見かけたことはありませんか?。それら、駅名とその順番や童 話の内容は一つの知識です。それが言えるから知恵はあるんだというのが関係 者の言い分です。「発達遅滞」という言葉も同じ観点からでた言葉で見た目を 難しくしているだけです。知的障害者福祉の前の呼び名は精神薄弱者福祉でし た。じゃなんで変わったんだといえば、差別的なニュアンスを薄める運動の結 果です。この分野はこれからも用語の名称が変わっていくと思います。

次に「自閉症」。精神障害でも同じ言葉は使われてますが、前回かいたように 先天性であることが先ずそれとは意味が違うことを示しています。その言葉の ごとく「閉ざしている」のかといえば、現実彼らは喜怒哀楽を表現するし、好 き嫌いを言動でアピールします。作業所で多いのが実習で一つの作業をどれだ け続けられるかといったテストです。その作業が嫌いな方はスキあらば逃げて いきます。では、それができないかといわれれば、ある職員がそばにいる時に かぎって数回できるといったことは多々あります。自ら他人とのコミュニケー ションをとらない、社会活動を自らしないといったところが「自閉」という言 葉に込められています。募金に立っていても後ろで職員が握手して離さないな んて光景は作業所のバザーや行事で見かけます。

前回にも採り上げました「自傷行為」。知的障害者福祉ではこの言葉に「連動 性」が付随します。どういうことかというと、一人が自傷行為を行うと普段と 環境が違うことに端を発して他の知的障害者が自傷行為を始めるということで す。養護学校での席順、職員の配置、作業所でのグループ分け等知的障害者が 複数集う場には連動性を抑えることが考慮されています。重度になると、最初 に自傷行為を始めた方を落ち着かせるのに他の人は全員他へ移動します。また それを機会にその場から逃げたりする人がいたりするので対策は職員みんなが 承知です。よく「この方には話しかけないで下さい」とか施設実習でいわれて る生徒さんがいますが、それは生徒さんがどうではなくて場の空気がかわった 時の対応は正職員がしますという意味が含まれています。仕事になっても最初 は担当する障害者が限られてしまうのも、事が起きた時の対処に即座につくに はまだ経験がないというだけです。私が働いてたときはこれでよく追いかけに 走ったり、別室に避難誘導とかしました。

これが一番大事な用語だと思います、「常同行為」。その字のごとく常に同じ ことをする。いつ、どこで、誰に、行動の順番、とどの項目も厳格に守られて いてこれが途中で阻止されるとパニック状態になります。駅名を順番に言って いるのを制止させたとすると、その人に対して嫌悪感をむき出しにするか、自 分を殴りだすとかよくあります。(と書きましたが、みなさんはやらないで下 さいね。)常同行為は着替えや片付け方も対象になることがあります。自分で 掃除しないと奇声を上げるとか、例をあげたらきりがない位に細かなことにま でその対象は及びます。施設にて、特定の人には近寄らないようにいわれた場 合は常同行為の度合いのきつい方でその方を知らない人がケアにあたるのはお 互いのために良くないということです。ただし、不意にある人の行為を止めた 場合、事が大きくなる前に職員に「すみません、○○さんが■■してるときに 話しかけました」と言って下さい。また、在宅介護で「私がこの部屋をきれい にしてみせると」利用者を無視して掃除しきらないで下さい。知的障害者福祉 は該当者のパニックと紙一重な一面があります。自分からパニックは起こさな いように、起こしてしまったら一番妥当な方法で解決をするように心がけて下 さい。

臨床心理学に関心のある方ならこの言葉もピンとくるでしょう。「ダウン症」。 染色体の配列が云々でみな似た行動をし、笑顔が多く、好き嫌いの差が激しい と書籍にはあるのですが、私の経験から学問上での定義がいちばん現場につな がっていないのはこれかと思います。彼らの性格や趣向には個人差が健常者並 にあります。それに短命でない人も多数知っています。軽度な人になると金銭 管理の出来ない普通の人と周囲からみられています。一概に障害名で自分のケ アを決めていく前に事前情報を出来るだけ仕入れてから、補足としてダウン症 の特徴を位置づけたほうが事が荒立たなかったです。

知的障害者福祉でのキーワードはまだ沢山ありますが、すべてに共通するのは 「パニック症状」が付随していることです。異常な興奮、行動、激しい嫌悪、 その他と障害の人の数だけあります。ケアする私たちとしてはくれぐれも身の 程をわきまえて、施設であれば指定された方のみのケアに徹する、在宅では実 力に見合わないケースは断ると正しい判断をして下さい。いつものことですが、 今回あげたキーワードをもっと細かく知りたい場合は、ネットで検索するとい いです。子供の成長記録をつけているページ。作業所での様子を写真で公開し ているページなど、参考資料は思いのほか簡単に見つけられると思います。

次回は、実際にケアにはいるにあたって私の体験等ふまえて列記していきます。 障害者福祉の大きな流れは「施設から在宅へ」で知的障害者福祉もその中に入 っています。「身の程をわきまえて」と書きましたが、順序だてて関わってい けば高齢者福祉とはまた違うやりがいをもてる分野です。

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