「知的障害者福祉、はじめに」
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福祉の中で、一番誤解が多い分野です。またここ数年で関係する機会が 減少していくものでもあります。最初は一連の誤解をといていくことか ら始めましょう。
最近、メディアで心理学や鬱を採り上げたりしていて、そっちと混同し ている方が多く感じます。法律でいうと、知的障害者は知的障害者福祉 法で規定され、鬱などココロの病気、精神障害者は精神保健法に基づい て措置が行われており別ものです。でも役所の窓口が一緒であったりち ょっと勉強されると同じ専門用語を幾つも発見します。でもその用語に しても意味が全然違います。一つだけあげましょう「自傷行為」。
 メンタルヘルスでいうとリストカットとか道具がでてきますし、大抵 は一人です。これが知的障害者でいうと自分の頭を自分の拳でなぐるの が代表的な現象です。また他の障害者が連鎖反応を起こします。そして 興奮しています。他方、同じ意味でつかわれているのに「てんかん(発 作)」という言葉があります。

知的障害者については、知的障害者心理学を唱える学派があれば、臨床 心理学の中の一項目として位置づける学派もあります。それは学んだ時 期と講師によってまちまちです。私は両方の授業を採って当時は旧称の 精神薄弱心理学、臨床心理学における精神薄弱者の心理が講義の名前で した。現場の実例をあげてないのにこの時点でややこしさをかんじます よね。知的障害者福祉は最初に制定されて以来まっすぐ整備されてきた ものではないのです。

日常、知的障害者を見かけたときに本人と保護者の衣服の違いを注意し て下さい。本人は五体満足なのにお粗末だったり180cmはあるのに介護用 の靴履いていたと目もあてられないのに同伴している方は身なりはしゃん としているどころかオシャレだったり高価なものを身につけていることが 大半です。これに象徴されるように、この分野は障害者自身よりも親、親 族主導で切り開かれてきたことが重要なポイントです。前に旧称をあげま したが、名前を換わって今に到るのは本人達が発端ではなく周囲、または 親族の外面を気遣ってきた結果です。私が勉強してたときも「発達遅滞」 とか他の名称をあげる学説や福祉運動がありました。

知的障害者かどうかを調べる基準は、IQを利用する学派と複数の項目につ いて関心があるなしで決める学派と多々ありますが、確かなのは先天性で あり所轄の役所で指定されている行為を行うまたは出来ないという条件を 満たしていることです多くは出産時から母子手帳が要る期間での言動、行 為その他で主に医師が決めます。曖昧な定義になってしまうのは先にあげ ました周囲の運動によってこの福祉が歩んできたことにつきます。全国統 一で同じ研究者の考えを採用し、同じような市民運動なんてまずありえま せん。今住んでいるところでは理解がないといって、福祉に力をいれてい る地域や私立の養護学校、作業所の多い地域に引っ越すことが多いので地 域差は激しく養護学校、作業所が定員割れしてるところあれば順番待ちの ところもあります。 唯一の例外をあげときましょう。「親が知的障害で あり、役所からも相応のフォローもなく育った子供」です。健常な子供で あっても間違って養護学校に入学、卒業してしまうとその子の将来は悲惨 です。これも親族がこの家庭を隠してきたことが大きな原因です。

以前「障害者福祉」でも記載しましたがこの分野でも福祉サービスに支払 われる額は水流しでした。そして困ったことに本人達に金銭管理や処世術 がないので、親や親族がそのお金を自分達に使っていました。養護学校の 保護者会などすると「どこのお金持ちの集まりだ?」という地域もありま した。彼らに問いただせば「私たちが面倒を見ているのだから私たちが金 銭管理しているのです。」と正論を返してきます。知的障害者本人達は自 分の格好がみすぼらしいとか、食事が少ないとか、部屋が汚いとかわかり ません。憲法で社会権というのをみなさんは習われてますが、条文には「 最低限の社会的生活の保障」であって「よりよい生活へとまい進する」で はないですよね。そこを突かれて「やるべきことはやっている」と居直ら れたら、民生委員も役所の知的障害者福祉司(※ケース・ワーカーではな く人数も少ないです。)も手をこまねいてしまいます。 電車の中でみょ うな格好をして同じ事を幾度も大声で言う知的障害の方を見かけることが ありますが、上記のような歴史、経緯があって今に到るのです。

以上で知的障害者は精神障害者や他の福祉を利用する方々とは別個である ことは書き終えました。次からは「ダウン症、自閉症、常同行為」といっ たこの分野特有の言葉を交えて事例に踏み込んでいきます。学問で研究し ている視点と現場で体験した上での視点は違うものがありますがなるべく 差のないものを選ぶ予定です。

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